平成18年5月から近所の上温品小学校の児童たちとの交流が始まった。その体験事例を報告して「教育」問題に一石を投じたいと思う。
 もともとこの交流の経緯は給食後の昼休憩時に、図書室のお手伝いをするヴォランティア募集に応じたことから始まった。
 連休明けに始めて登校すると、仕事は図書の整理とか、カヴァーの取り付けなど手間のかかることであった。しばらく様子をみていると、立派な図書室なのに来室する児童の数が非常に少ないのに気がついた。決められた図書委員のほかには2〜3名しか来ない。雨が降る日には外で遊べないので大勢の児童が図書室にあそびにくる。
 本を読む動機づけには、まず図書室にくる児童の数を増やすことと考えて、英単語を教える計画書を作成して、校長先生と相談した。私の登校日は月水金の週3回、時間は13時から30分。校長先生は児童がはたして興味を示すか疑問に思ったようだが、「始めて効果がないようならやめればよい」ということで許可が出た。
 計画の呼称は「一日一単語(One word a day)」とした。入会した児童に単語カードを一冊あげて、覚えたい単語を自分でカードに書き込ませる方式をとった。3冊100円のカードを1冊、アルファベットとローマ字表をあげて自分の名前をローマ字で1枚目に書くことから始める。
 当初2週間ぐらいは全く反応がない。校長先生も心配しているようであった。6月に入って急に入会する児童が増え始めた。夏休み前までに56人、冬休み前までに77人の児童が入会した。全校児童の数が320人なので、短期間にしてはかなり浸透したといえよう。
 1回来て単語カードをもらったら2度と来ない児童がいたり。飽きてこなくなる児童がいたり、問題はいろいろあるが、試行錯誤を繰り返しながら継続してみようと考えている。予想に反して低学年に興味を継続する子が多い。
 図書室にくる児童数は当初の10倍ぐらいになった。単語教室に入会していない児童もかなり来室するようになった。児童の興味から学びながら、6年生から1年生まで幅広い興味を同時につなぐ方法にもいろいろな工夫が要求される。
(07.1.1投稿)


 曹洞宗には道元禅師の教えに基づく修証義というお経がある。第四章発菩提心(ほつぼだいしん)に「菩提心をおこすというはおのれいまだわたらざるさきに一切衆生をわたさんと発願しいとなむなり」とあり、その具体的な実践の方法に、布施、愛語、利行、同時という教えがある。これが四摂法(ししょうぼう)である。小学生との交流に関わる基本の考えは四摂法の心である。
   ・学校や父兄に経費の負担を求めない。(布施)
   ・来る児童にはすべて自分の孫のように語りかける。(愛語)
   ・児童のためになるように知恵を絞って努力する。(利行)
   ・1年生から6年生まで誰でも受容れる。(同時)
 午後1時に給食の終わりを告げるチャイムが鳴る。5分後くらいから図書室に児童が集まってくる。1時27分に全校児童の学校清掃準備のチャイムが鳴る。実質約20分ぐらいの時間で最近では20〜30人の児童がにぎやかに、単語帳に書き込みをしている。
 初参加の児童には、丁寧に書き方を教えるが、2〜3人の場合は、先に入会している児童に手伝ってもらう。一人の児童に手取り足取り指導することは出来ない。
 小道具の中心は単語帳。
「辞書は本屋で売っている。単語帳も百均で売っている。だけど皆さんが自分で書いた単語帳は世界で唯一つどこにも売っていません。それは皆さんが覚えようとして作った自分のための辞書なのです。大事に使いましょう。」
と繰り返し伝える。
 2番目の小道具は、葉書大の厚紙の表に日本語、裏に英語を書いたカードを80枚ほど作り一つの机の上に並べておいて、覚えたい単語を自分の単語帳に書き写させる。これで大勢の児童が同時に取り組んでいける。
 38歳の時、脱サラしてロスアンジェルスの宝石学校に行った時、サンプルルームに展示してある200種類ぐらいの宝石を見てびっくりしたことが思い出される。ほとんど名前も知らないのに半年で鑑別できるようになるとは信じられない思いであった。ところが屈折率とか比重とか、顕微鏡検査とか、いろいろな方法で消去していくと最後に断定できるようになるカリキュラムが実に巧妙に工夫されており、1クラス20人で始まったコースの終わりには私が一番早く終了して、私の隣のカナダ人が2番で終了した。
 2ヶ月は同時進行だが3ヶ月目からは、早いものはどんどん先に進める仕組みなのであった。夜になると私の部屋は5〜6人の学生が勉強の仕方を習いに来る。その時使った武器が単語帳だった。今でも備忘メモの代わりに使っている。この交流は3年ぐらい過ぎないと評価分析が出来ないかもしれない。
(07.1.25投稿)




(続く)